不動産の売却を始めても、なかなか内見や購入申込みにつながらないことがあります。
仲介会社からは、
「今は問い合わせが少ない時期です」
「もう少し価格を下げた方がよいかもしれません」
と説明されることもあるでしょう。
もちろん、売れない理由が価格や市場環境にあるケースは少なくありません。
しかし、不動産売却を成功される方には、共通する考え方があります。
それは、「いくらで売れるか」だけでなく、「物件情報が市場に正しく開かれているか」を見て意思決定していることです。
▪️成功する人は、「依頼したから安心」とは考えない
不動産を売却するとき、多くの方は仲介会社に販売活動を任せます。
広告の掲載。
購入希望者への紹介。
内見の日程調整。
価格交渉。
こうした実務を専門家に任せること自体は、合理的な選択です。
しかし、任せることと、状況を確認しないことは同じではありません。
どのような媒体に掲載されているのか。
他の不動産会社にも紹介できる状態なのか。
問い合わせや内見は何件あったのか。
購入申込みは届いていないのか。
成功する人は、仲介会社を信頼しながらも、販売活動の事実を定期的に確認しています。
▪️「囲い込み」で失われるのは、売却の機会
不動産業界で問題となる行為の一つに、「囲い込み」があります。
これは、売主から売却を任された仲介会社が、他社から購入希望者の紹介を受けても、事実と異なる理由で紹介や内見を断り、自社で買主を見つけることを優先する行為です。
背景には、売主と買主の双方を同じ会社が仲介し、双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」をめざす動機がある場合があります。
両手仲介そのものが直ちに問題なのではありません。
問題は、自社の利益を優先するために、売主に届くはずだった購入機会を遮断することです。
物件情報が十分に流通しなければ、内見の機会が減る。
複数の購入希望者を比較できない。
販売期間が長引く。
価格を下げざるを得なくなる。
といった不利益につながりかねません。
成功する人は、「問い合わせが少ない」という説明をそのまま受け取らず、市場から反応がないのか、市場に十分届いていないのかを分けて考えています。

▪️成功する人は、レインズを「登録の有無」だけで終わらせない
レインズは、不動産会社間で物件情報を共有するためのシステムです。
物件が登録されると、他の不動産会社もその情報を確認し、自社の購入希望者へ紹介できるようになります。
売主は、登録証明書に記載された情報から売主専用画面へアクセスし、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時停止中」といった取引状況を確認できます。
2025年1月からは、レインズへ登録された物件について、宅地建物取引業者による取引状況の登録が義務化されました。
また、売主が専用画面へアクセスしやすいよう、登録証明書への二次元コードの掲載も始まっています。
ただし、成功する人は、「レインズに登録されています」という説明だけで安心しません。
登録証明書を受け取っているか。
現在のステータスは正しいか。
実際に公開中になっているか。
身に覚えのない「購入申込みあり」や「一時停止」になっていないか。
こうした点まで自分で確認します。
なお、レインズへの登録義務は媒介契約の種類によって異なります。
媒介契約を結ぶ際には、情報の公開範囲や販売方法も含めて確認することが重要です。
▪️成功する人は、「結果」ではなく「プロセス」を確認する
売却活動では、最終的に売れたかどうかだけで仲介会社を評価しがちです。
しかし、売却には一定の時間がかかります。
だからこそ、途中のプロセスを確認する必要があります。
広告はどこに掲載されたのか。
他社から何件問い合わせがあったのか。
内見後にはどのような感想があったのか。
価格に対してどのような反応があったのか。
次にどのような販売施策を行うのか。
特に専任媒介契約では、宅地建物取引業者に定期的な業務報告が求められています。
また、媒介契約の種類を問わず、購入申込みがあった場合には、仲介会社は売主へ遅滞なく報告しなければなりません。
成功する人は、「売れていません」という結果だけではなく、その結果に至るまでに何が行われたのかを確認しています。
▪️高い査定価格より、「売却戦略の根拠」を見る
仲介会社を選ぶ際に、最も高い査定価格を提示した会社へ依頼したくなるのは自然なことです。
しかし、査定価格は売却を保証する価格ではありません。
高い査定価格で契約を取り、その後に値下げを提案することも考えられます。
成功する人が確認するのは、査定価格の根拠。
想定する購入者層。
広告や他社連携の方針。
販売開始後の価格見直し基準。
問い合わせ状況の報告方法。
囲い込みを防ぐための社内ルール。
といった販売戦略です。
重要なのは、期待させる数字ではなく、市場へ広く届け、適切な条件で成約するための仕組みがあるかということです。
▪️買主側も、「本当に紹介可能か」を確かめる
囲い込みは、売主だけの問題ではありません。
買主がインターネットで見つけた物件について、自分が依頼している不動産会社から問い合わせてもらったところ、「商談中です」「紹介できません」と言われることがあります。
もちろん、実際に申込みが入り、紹介できない場合もあります。
しかし、説明に疑問がある場合には、掲載元の会社へ募集状況を確認するなど、事実関係を確かめることも選択肢になります。
ただし、複数の会社を競わせること自体が目的ではありません。
成功する人が求めているのは、取引に関わる情報が開かれ、売主と買主の双方が納得できる状態です。
▪️不動産売却は、「会社選び」より「仕組み選び」
不動産会社の規模や知名度は、一つの判断材料です。
しかし、大手だから必ず透明性が高い、小規模だから問題がある、という単純な話ではありません。
成功する人は、会社名だけではなく、情報をどこまで公開するか。
他社とどのように連携するか。
問い合わせをどのように報告するか。
利益相反をどのように管理するか。
という仕組みを見ています。
不動産売却とは、一社にすべてを委ねることではありません。
専門家と情報を共有しながら、売主自身も販売活動の状況を把握して進める共同作業なのです。
▪️まとめ
不動産売却で成功する人は、「査定価格が高いから。」「大手だから安心」という理由だけで意思決定していません。
見ているのは、「自分の物件が市場に正しく開かれ、売主の利益を優先して販売されているか」ということです。
レインズへ登録されているか。
取引状況は正しく表示されているか。
他社からの問い合わせや購入申込みは報告されているか。
販売活動の根拠を説明してもらえるか。
こうした透明性を確認することが、売却機会と資産価値を守ることにつながります。
住まいも、資産も、事業も。
成功する人は、相手の説明だけに依存せず、情報が見える仕組みを確認して意思決定しています。
その積み重ねが、納得できる条件での売却と、信頼できる不動産取引につながるのではないでしょうか。
プロフィール
宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
楢崎 隆也
住まい・資産・事業に関する「意思決定」をテーマに情報発信。宅地建物取引士とファイナンシャルプランナーの専門性を活かし、住宅購入や事業用不動産の活用、資産形成、相続・事業承継、経営戦略までを一体で捉え、一人ひとりの価値観やライフプラン、経営課題に寄り添った意思決定を支援している。
主な執筆テーマ
住宅購入/賃貸住宅/不動産/事業用不動産/資産形成/ライフプラン/相続/事業承継/経営戦略


